酔っぱらうと未だにValkneeのnice picを聴いてしまう。
そして眠りにおちるまでモヤモヤとした感情を胸に抱えてしまう。
Valkneeは舌ったらずなラップが癖になるフィメールラッパーだ。
ギャルラッパーを自称しているが、その起源はどちらかというとオタク。というかハロオタを自称しており、ハロプロの音源にラップを載せ始めたのがきっかけということがsaii君のインタビューでも読める。
valknee+ANTIC、ギャル憧れ世代のギャルサーを──「パンチライン・オブ・ザ・マンス」第31回 - OTOTOY
ValkneeはANTICというトラックメーカーと組んで曲をリリースしているんだけど、トラップっぽい曲もあればほんわか浮遊感ソングもあって、本当にイケイケって感じで目が離せない。
でもギャルっぽい面もリリックに垣間見れるのがValkneeの面白さだ。
例えば『悪夢』。
「新しい彼女できたとしても彼女の元カレもValkneeファンだよー」「新しい彼女できたとしても彼女の鼻歌もValkneeラップよー」というギャルっぽいマウントの取り方を表していて面白い。そして無意識なんだろうけど、『悪夢』のフロウはari1010の「君の名は」を彷彿とさせる。それが癖になる。
『Dreamin'(valknee好きピremix)』も外せない。
「好きピ、まじ好きー」というあたし世代には使うのも憚れる現代ギャル語を連呼。複雑なコードのトラックとも相性が良く、舌ったらずな歌い方、ユニゾンの厚みも相まって中毒性の強い曲に仕上がっている。細川ふみえの「スキスキスー」的なノリなんだよね。
ここまで書けばあたしのValknee愛が伝わると思うんだけど、問題の曲は「nice pic」というタイトル。
「男の自撮りはカマくさいけど」という表現が出てくる。
男はこうであるべき、という押しつけ、そして「カマくさい」というゲイに対する差別表現が一部に騒がれた。といいながら、果たしてこれはゲイ差別なのかと未だに考えてしまう。単なる当事者による言葉狩りではないのかって。
言葉というのは本当に難しい。本人はそのつもりがないのも伝わってくる。
でも正直に言って、好きなアーティストがそういう表現を使っているのを見ると非常に胸が苦しくなった。
でもね、あたしこの曲大好きなの!!
だってサビが「シティーボーイの飯見せてェ」だよ!めっちゃキモいじゃん!男の子に対するスニーカーから飯までインスタでアップしろっていう欲望の歌なの。そのベクトル、本当に好きなの。トラックもめっちゃかっこいいし。無意識に「シティボーイの飯見せて」ってうっかり呟いちゃうもん。
あのね。このジレンマをどう昇華したらいいのか、36歳になってもまだわかんない。情けない。本当に興味ない対象だったら「ハイハイ」で冷ややかに笑って澄ましちゃってるんだけど、だってValknee好きなんだもん。
そもそもゲイにハロオタ人口めっちゃ多いしね。ほら、アイドルってゲイが自己投影するのにぴったりだから。美しくてかわいくて。ちなみにあたしは鞘師、さゆみ、壇はう推しだったんだけど。だからValkneeのことも嫌いになれないの。一緒にハロプロ推したいよ。そんなValkneeを推したいよ。
それでその問題の箇所を指摘する声もあったんだけど、それを眺めながら時代は変ったなって思った。だって指摘してる方々、LGBT当事者じゃないんだもん。
valkneeの新曲、ビートがまたSAISENTAN。なのにカマくさいとかいう昭和のフレーズでruined。そこ以外はgood。
— USB (@LilPri_) February 18, 2020
考えるより実際に聴けばわかるけど、カマくさいっていう古くさいホモフォビックなワードで確実に曲の良さが色褪せちゃう。valknee自身、何年か前に書いたもので今は感覚をアップデートしてるって言ってるから、次は完全にいかした曲出してほしい
— 木之本babyboy拓次 (@endofviolence) February 19, 2020
救われた。本当に救われた。
この二人の呟きに。
時代は変わった。
中1の時、理科の先生に「オカマ」って罵られたことがあった。
あの屈辱は忘れもしない。あの日、その理不尽な罵りに対して怒りが沸き上がり、泣きながら職員室に駆け込み、学年主任の先生に「教育者がそういうことしていいんですか?」って絶望しながら泣き叫んだ。自我がまだきちんと形成されてない時期、己のジェンダーもまだわからぬ時期、理不尽に差別を受けた。あたしはあの日、人を呪うことを覚えた。
あの日の自分に、これから世の中はもっと良くなるって伝えたい。
私は今でもモヤモヤしながらValkneeを聴き続けてる。
Valkneeが大好きだからこそこのモヤモヤはきっと消えない。
追記:
SNSでご本人よりメッセージを頂きました。とても素敵な方だったので、ぜひ読んでみてください。より一層好きになりました。再生回数伸びてほしい。
追記2:
他にも影響力の強いラッパーでゲイフォビアな方がいる中、コンシャスなラッパーにだけ狙い撃ちをしてこういう意見を表明しているのではないかという声も見かけました。
そこでビーフするつもりはないけど、私はドライブバイの時には既にインターネットの使い手だったのでめっちゃ抗議メールしてます。あと無謀にもクラジャマとか乗り込んで騒ぎを起こしたこともありました。意図的ではなかったけど。
最近はメジャーラッパーは切り捨てちゃう。サウンドが好みじゃないから。でも「コンシャスなラッパー」を狙い撃ちしてるってわけじゃない。そこはご理解頂きたい。結果的に個人として、サウンドの面白さを求めたら「コンシャスなラッパー」ばっかり聞いちゃってる面はあります。影響力なんかで音楽は選んでません。ライター業する時も特にそうですが、自分がリスペクトしたい人たちの曲だけ取り上げたいと思っていますよう。