帰省してからずっと犬と遊んでる。
うちの犬は返品犬だった。
当時の上司の知人がペットショップというヤクザな商売を営んでいて、血統書がついたブランド犬を1万で仕入れて7万で売っていたんだけれど、売れた犬に健康的な問題があったとかで返品されてしまい、困った挙句に上司に犬をもらってくれないかと連絡が来た。健康的な問題とはいっても頭頂部に穴が開いているという小型犬にはよくある話で、死にやすいとかそういうのはないそう。
その頃、うちの実家では姉が勤め先を辞めて公務員試験の勉強をしていたのだけれど、外部との接触がなかったために少し病んでしまっていた。表情が暗いとかその程度だけど。
それで何の気なしに「チワワ要る？」と聞いたら「要る！もらってきて！」と即答したので上司を通してもらってきたんだけど、片手に乗るくらいの真っ白なチワワでとてもかわいかった。
姉は大喜びだったが、うちの両親は衛生観念的に犬と猫だけは買わないと決めていたような人たちなので「病んだ姉のために渋々」という感じだった。まあ、それでもお犬様が来てからは父がデロデロになり、母も続いてメロメロになった。
あたしはそのあと直ぐにアメリカに行ってしまったので知らなかったが、日本に戻ってみれば朝の散歩は母、夜の散歩は父という役割になっていて、肝心の姉は何もしてないというありがちな結果になっていた。すっかり成犬になったチワワはもう家族の一員になっていて、救急車のサイレンが聞こえるたびにけたたましく吠えたりする。結局、頭の穴ってなんだったの？って聞きたくなるくらい元気だ。幼犬の頃はアトピーとか色々あったみたいで、かさばる医療費に親が「原価のわりに高くつく」と笑ってたりもしたが、今では散歩の時間の度に催促されるくらいだ。真っ白だった体だったのになぜか茶色の毛が増え、今では夕飯のおこぼれがないか探してリビングを歩き回るくらい卑しい犬に育ってしまった。
あたしは実家を出てから四年めになるけど、たまに帰省するとはしゃぎ回って大変。もう犬のために帰省しているようなもんだ。
そんなチワワももうすぐ7歳になる。今日改めて顔を眺めたらずいぶん老けたなぁと思った。ぬいぐるみを振ると相変わらず反応して猛突進してくる。明日の朝一で東京には帰るが、せっかくの無職なのでまた近々帰省しようと思った。
ちなみにその上司の知人のペットショップはとっくに廃業したという。本来返品されたペットがどうなるかなんて考えたくもない。
