遂にあの場所に行ってきた。おしゃれタウン、代官山にあるMr.フレンドリーカフェ。カフェとしてはなーんてことはない。でもあたしが中2の時にすげえ流行っていたエスパパに会える貴重な場所なんだ。
代官山は凄い。駅を降りると顎のラインが崩れた中年のおじさんが美容師というか服飾学校の学生のようなモノトーンのモードな服を着ていた。そしてベビーカーを推すママの髪が8:2で分けられたざっくりウェットボブだった。人類総モード時代が代官山では続いている。時空が歪んでいる。ローソンですら渡辺篤史が探訪に来てそうなおしゃれビルディングだった。
ジャンクな肉の香りを漂わせるファーストフードも、腐敗臭をまき散らす赤ちょうちんも、ピンクのネオンが光り輝く風俗街も代官山にはない。あたしの愛する下世話カルチャーが一切ない。おしゃれなカフェとおしゃれなバーとおしゃれな美容室とおしゃれな服屋とおしゃれな雑貨屋で構成されている、それが代官山。
そんな窒息死しそうな中、息を止めて早歩きで一気に駆け抜ける。全身ユニクロというもろい鎧で「非おしゃれピープル」というアイデンティティを守り抜く。しかし隙あらばおしゃれの風があたしの肌をすれ違いざまに切り込む。あたしだって学生時代は必死に渋谷パルコのzuccaやツモリチサトで全身飾っていた。代官山BOYで髪を刈り上げていた。でもその先には何もなかった。おしゃれしていたってしていなくたってあたしはあたしだってことに気づいた。だから「オシャレじゃない」って見下されたって全然へーきなのだ。
そんな風に代官山で見えない敵と戦い続ける。
ひまわり畑を抜けて恵比寿方面へと続く長い坂道を抜けてMR.FRIENDLY Cafeにたどり着く。そこにはあたしが大好きだったエスパパがいた。
エスパパ!
会いたかったよ!
まあ、若い子にエスパパって言ったってちんぷんかんぷんだと思うんだけれど、うちらが中学生の時、とにかくMR.FRIENDLYこと、エスパパが流行った。クラスの女子20人のうち、5人はエスパパのペンケースを持っていた。
それまではるるる学園だのアメオくんだの、ちょっとファニーなキャラクターが主流だったんだけれど、やっぱ中学生というマセたい年頃だったうちらにはエスパパだったりカンゴールだったり、bitch!だったり、ちょいスタイリッシュなブランドがしっくり来た。だからポーチ、ノート、カバンなどエスパパの様々のステーショナリーグッズを女子は使っていた。
しかしいつのまにかエスパパブームは去り、田舎のファンシーショップじゃ見かけなくなってしまった。その存在すら忘れていたこともあったけれど、代官山でエスパパ再会できるという噂を聞きつけて今回向かったのだ。中学生というピュアで蒼い存在だったあたしも、30を超えて世の中に揉まれて酸いも甘いも知り、どす黒い生き物になってしまったけれど、なんとてしてでもエスパパに会いたかった。
甘い香りが漂う店内に入った瞬間、あたしは14歳に戻った。髭が抜け落ち、顔のシワが消え、シミが抜けて、澄んだ心に戻った、そんな気がした。だって店内には溢れんばかりのエスパパ。
心の中では発狂してヘドバンをかましていたけどとりあえず平静を装い、パンケーキプレートを注文。そして待っている間に店内を物色。あいにく思い出のペンケースはなかったけれど、様々なエスパパグッズがで埋め尽くされていた。手帳にカバン、ぬいぐるみにキーホルダー。ポストカードになぜか半被などもある。
どうしよう、何を買おうと迷っていて見つけた半額セールのTシャツ。1500円!という安さに喜びながらそれを購入した。
そして出ててきたパンケーキプレートのかわいさよ。
もちろん味も美味しい。ふと隣をみたら大きめのエスパパ。
多感でピュアだった14歳のころを思い出して、少しセンチメンタル気分で、そしてとてもスウィートなMR.FRIENDLY Cafe。残念ながらMR.FRIENDLYは今はもうエスパパとは呼ばれていない。でも当時のエスパパ人気を知らない人でもぜひ行ってもらいたい。誰とでも仲良くなれるMR.FRIENDLYを愛さずにはいられないだろう。
と、散々代官山をDISってしまったが、ついでに行ってみたかった万華鏡専門店リトルベアーに立ち寄ってきました。万華鏡作家の山見浩司氏による、壮大でロマンティックな万華鏡が沢山並んでいた。少し覗かせてもらったが、普通の万華鏡よりもダイナミックで美しい景色が広がっていた。中には6万円以上するものもあった。でもあの世界に毎日好きなだけ浸れるのであれば決して高くないのかもしれない。
ホームページでも購入できるのでぜひ。
http://littlebear.shop24.makeshop.jp/shopdetail/000000000065/016/X/page1/order/
それからロシア雑貨を扱っているJohnnyjumpupも覗いてきた。かわいらしいマトリョーシカが沢山あった。マトリョーシカだけでなく、玉子にキラキラとした細工を施したのもかわいかった。
エスパパにも会うことができたし、少しは代官山の苦手意識を克服できたかもしれない。近いうちにまた行きたいと思う。