それでいいっしょ

ゲイHIPHOPライター鼎のブログ

渋谷RAP酒場でもつ酢飯がライブ&新曲披露!タイムマシーン3号もバトルに参加!?

MCバトルが大いに流行っている。戦極 MC BATTLEにTHE 罵倒、そしてKING OF KINGS。数々のラッパー達がその名をあげようと日々ラップで戦い抜いている。笑う者もいれば泣く者もいて、そこにはいつもドラマがある。

新宿二丁目でMCバトル!オネエスタイルダンジョンに潜入してきた! 

 

そんなわけで若い子たちにはMCバトルブームが到来している。でも「初めてはやっぱり怖い」「大きいバトルにでる実力はない」そんな迷えるヘッズのために有志が集り、クラブで「気軽に参加できるMCバトル」も開催されている。自分も縁があってKIYO a.k.a.Nakid君主催のmicscreamに遊びにいったりもしているんだけれど、昨日はもつ酢飯がライブをするというので丸省君が企画するRAP酒場@渋谷Dimensionに遊びに行ってきた。

 

Dimensionに入るなりStudioLamaを主催しているお騒がせネットラッパー、ぎぎぎのでにろう君のバトルが始まっていた。相変わらず上手い、というか遊び心が満載のラップをしているといつも思う。「ぎぎぎ鬼太郎じゃなくてはだしのゲン」みたいなことを言っていて笑ってしまった。うちは兄が犬にムスビという名前をつけようとしていたくらい、はだゲン好きな兄弟だったのだ。

それにしても凄い人の数。MCが立っているはずの踊り場が全然見えない。ネル君、ヌル君、レスラー君、マッチョ君、Scheme君、寝太郎君、アナウンスで聞いて覚えている限りだとこのあたりのMCが出ていた。あとは我らが下町MC組のTUMAもいた。そうそう、Z.I.O-RAMA‏君もいて久しぶりに会えた。しかし残念ながら肝心の踊り場が見えないので誰が誰だかわからないという事態に。「今日のために茨城の村から来た」と言っていたMCもいたが、美浦村かななんて思ったりもした。千葉や茨城から皆来るなんてRAP酒場も知らないうちに大人気イベントになってしまったようだ。

前半のバトルが落ち着くともつ酢飯のライブが始まる。

もつ酢飯

もつ酢飯はワッショイサンバムノウによるラップユニットだ。実はRealsoundに寄稿したフィメールラッパー特集記事でも取り上げさせてもらったこともあるが、この一年でもつ酢飯を取り巻く環境は大きく変わった。

まず、ラップを始めて間もないワッショイサンバ戦極MCBATTLE×池袋パルコ ROOFTOP MCBATTLEにおいてRei©hiの相手に抜擢されて注目を集めた。「この狐30万、指輪50万で金歯30万。総額110万。顔じゃ勝てないから金額で勝ちに来た」というパンチラインを放ち、物凄いインパクトをシーンに残した。バトルとしては負けてしまったが、審査員のCOMA-CHIが大褒めしたこともあってワッショイサンバの評価は一気に上がった。

そしてムノウともつ酢飯を結成し、mazai recordsからもつ酢飯EP』を発表。代表曲の「G.i.r.l」はフレッシュ「らっぷの時間。」でもライブ放映されるなど、一部のヘッズから人気を集めた。ここまではスローペースながらも着実に成長していったと思う。

そして二人してシンデレラMCバトルに出場。しかし期待を集めながらも二人して一回戦敗退という残念な結果を残してしまう。ワッショイサンバに至ってはROOFTOP MCBATTLEでうまく昇華できた彼女の世界観がむなしく空回りしてしまうという事態に。大きな成功体験からの急な挫折。この現実は二人にとってとても酷だったと思う。

しかし、二人ともその悔しさを乗り越え、着実にライブをこなしていった。前述のmicscreamではエネルギッシュなライブをし、ナイフレでは狐火など大物ラッパーがいるなかでのライブを体験、そして戦極女帝杯では結果的には敗退したものの、二人とも勝利体験を得ることができた(しかもムノウは二回戦も勝利)。他にも主催の大モツ酢飯展を無事に成功させるなど、やっと本人たちのポテンシャルに体験が追いついてきたなと感じる。大学を卒業して社会に出たのも大きかっただろう。雰囲気も変わった気がする。

そして遂に彼女たちに大きな転機が舞い降りる。MC松島が主催するレーベル「トウキョウトガリネズミ」への加入だ。

MC松島 & トウキョウトガリネズミ

MC松島は戦極MCBATTLE 第九章でBEST4入り、B BOY PARK MC BATTLE 2011 冬の陣でもBEST4に入るなど、数々のバトルで結果を残してきた札幌のバトルMCだ。活動はそれだけにとどまらず、自身のレーベル「トウキョウトガリネズミ」を立ち上げて音源も精力的にリリースしている。「B.M.K.D.(バトルMCは曲がださい)」という問題作をドロップして注目を集めた。個人的に面白いなと思うのが、数々のビートメーカーとコラボを続けているという点だ。「B.M.K.D.」でもわかる通り、ビート選びにこだわりがあるのだろう。次々と個性的なビートメーカーとコラボしてはリリースしているが、それが結構良いのだ。

LOW HIGH WHO?のDJ6月を迎えたなゆたのそら

なゆたのそら

なゆたのそら

  • MC松島
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

あっこゴリラ、DAOKO周りでも活躍しているパーゴルによる飛行機に乗り遅れるリミックス。

飛行機に乗り遅れる (PARKGOLF Remix)

飛行機に乗り遅れる (PARKGOLF Remix)

  • MC松島
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

西新宿パンティーズのトラックも手掛けた8ronix絡みの「ピーポンへ」や「ニュートラル」も良い。

ピーポンへ (feat. SNEEEZE)

ピーポンへ (feat. SNEEEZE)

  • MC松島 x 8ronix
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes
ニュートラル

ニュートラル

  • MC松島 x 8ronix
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

そしてLil'諭吉ことチェリーブラウンが制作した「She's a hero」

She's a hero

She's a hero

  • MC松島
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

新作ではビートコンテストなどでも優勝しているillmoreを迎えているが、自分としてはクリスタルウォーターズ使いの曲「マンブルたけし」も気になっている。

マンブルたけし feat. マンブルたけし

マンブルたけし feat. マンブルたけし

  • MC松島 & illmore
  • ヒップホップ/ラップ
  • provided courtesy of iTunes

でもなんだかんだでトガリネズミ周辺で活動しているゼネラルド絶大とKabcoが良質なトラックを作っているのも見逃せない。

風が強い日を選んで走る

風が強い日を選んで走る

  • MC松島
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes


そんな彼のレーベル「トウキョウトガリネズミ」内のアーティストも最近は評価が上がっている。個人的にはフィメールラッパーのメガネのアルバム『手さぐり』なんかも気に入っている。MC松島自身もアルバムにゲスト参加しているが、中でもあべともなりの怪曲「産みの悦び」を手掛けた食品まつりが制作した「夜に溶ける」がアブストラクトな雰囲気でとっても面白かった。

夜に溶ける feat. ヱスケー, diz

夜に溶ける feat. ヱスケー, diz

  • メガネ
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥200
  • provided courtesy of iTunes

ここにもつ酢飯が名前を並べたのだ。もつ酢飯という素材が今後トガリでどう料理されるのか。どうしても期待は高まる。そしてそんな彼女たちを一目見ようと今回もたくさんの客が集まった。

もつ酢飯ライブ

f:id:makisakouonuma:20170520184604j:plain f:id:makisakouonuma:20170520184625j:plain

「もつ酢飯のテーマ」からライブは始まる。どうしても女子二人組ということでY.I.M.のY.I.Mのテーマを連想してしまうんだけど、Y.I.Mが「お前のものは俺のもの」ならもつ酢飯は「割れ鍋に綴じ蓋」というわけだ。フックもシンプルなので観客も一緒に楽しそうに歌っていた。

続いてもつ酢飯EPから「1on1」を披露。マウンディングし合う女子の応酬を描いたこの曲はそのやりとりに思わず笑顔がこぼれる。ビートはチンポジムのどくまんじゅう。ああ、声に出して読みたい日本語「チンポジム」。

そして注目の新曲「無理イズ良くない」を披露。社会に出て、色々思うことがあったんだろうなと思わずにはいられない「訳がありそう」なタイトルに反してビートはあの田島ハルコ。そう来たか。

田島ハルコはおやすみホログラムを解雇になりながらも、もちまえのハングリー精神でソロ曲をリリースするシンガーだ。独特の電子音とヘタウマな歌でなぞの世界観を表現した「暴力天女」などで注目集める。そういうHIPHOP畑でないところからあえてビートを起用することによって、もつ酢飯の独特な世界を構築することに成功した。
実際にフックではムノウが歌を披露し、その傍らでワッショイサンバがラップを乗せるという新しい試みに挑戦しているが、あまり田島ハルコらしい毒々しさは抑えられており、もつ酢飯らしいキュートな一曲に仕上がっていた。そしてラップだけでなく歌もできるムノウちゃんの器用さに改めて脱帽させられた。

次はもつ酢飯EPに戻って「ブラック・リフレクション」。これも1on1に共通する女子ネタ。「オレンジのチーク、まるで黄疸」「アイシャドウは案の定ブルー、え、殴られたの?まわり勘ぐる」。そういうコミカルなリリックが続くが、フックはもつ酢飯のテーマに通じるシンプルさがあってわかりやすい。「ファッションメイク!ファッションメイク!」。思わず口ずさんでしまうキャッチーさ。

そして最後は「G.I.R.L」。これもゆるかわモテ女子を批判するわかりやすい曲。「シュークリームは投げるもんじゃねえ」というタイムリーなリリックが入っているが、もうここまでくると「独身OLの日常」のノブ子みたいなものなのかなと思えてくるが、フックの勢いの良さは痛快。観客も沸いていた。

新曲を覗いた曲はフリーでダウンロードが可能。ぜひ聴いてほしい。


ROOFTOP MCBATTLEではワッショイサンバの顔がこわばっていたが、今では余裕すら感じられる良いライブだった。どくまんじゅうのトラックが男臭くて、最近のフィメールラッパーの中ではちょっともっさいスタイルかな、なんて最初は思っていたけど、あの靴山底袋さんの評価を知って見方が変わった。それが味なのである。


田島ハルコのビート然り、トガリネズミ入りでどんどん進化していくであろう。今後も期待できる存在だ。

MCバトル

話はMCバトルに戻って後半戦。参加者がまさかの40人越えだった。本当に人気イベントになったんだなあと目頭を押さえながらも、次々とさばいていかなければ時間的に間に合わない。保育園DJとしての活動でも知られるアボカズヒロ氏による選曲だが、ロックワイルダーを流すところあたりよくわかっている。この辺で酔っぱらってしまい、あんまり覚えてないんだけれど、みんなやっぱり上手いんだ。「まままま待って」とスクラッチをしたようなラップを披露したり、もう誰が優勝してもおかしくはないと思ったんだけれど、特に勢いがあるなと思ったのは個人的にはヌル君だった。

あとはジオラマ君とMazai recordsのマノイちゃんの試合も中々面白かった。

f:id:makisakouonuma:20170520184145j:plain

マノイちゃんの高速ラップ、個人的にはとても好きなんだけど、フリースタイルバカであるジオラマ君の方が一歩上手だった様子。ちなみにジオラマ君の1stアルバムはPENAというトラックメーカーが作っていて本当に好き。あの不可思議/wonderboyが参加しているあたり、もっと有名になって欲しいと一人願っている。

NIHILISM feat. 不可思議/wonderboy

NIHILISM feat. 不可思議/wonderboy

  • Z.I.O-RAMA
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥150
  • provided courtesy of iTunes

 
1回戦のバトルに話を戻すとムノウちゃんとオタクの男の子のバトルも面白かった。「今期のノイタミナ何見てる?」「ノイタミナは見てないけれど今度君と飲みたいな」と華麗に返すムノウちゃん。バトル自体は面白かったけど、喪女キャラなのにノイタミナ見てないのって個人的には衝撃だった。喪女キャラブランディング失格です!と思っちゃった。でもムノウちゃんはキャップをわざわざ外して挨拶にきてくれたんだけど、喪女というにはかわいすぎるなって思っていたのは内緒。

実は先日下町HIPHOP組の秘密結社が開かれたときに自分もお呼ばれしたんだけれど、ワッショイサンバもいたのね。そしたら居酒屋のお客さんが「ワッショイサンバさんですよね」と聞いてきたので「ワッショイもこんなに知名度が上がったのか」と思っておもわず鳥肌が立ってしまったの。でも「ごめんなさい、僕ムノウちゃん派なんです」とその人が独白するずっこけ展開だったという事件があって、今回ワッショイはバトルでもそのネタを披露してた。そうやってバランスよくネタにできる関係っていいなと本当に思いました。

個人的に大穴だったのが加藤真弓さん。ナチュラルメイクか、すっぴんに飾りっけのないショートヘア、そしてメガネってスタイルなんだけれど、スカイブルーのゆるいデニムにレザージャケットでシンプルなのにめちゃかっこよかった。ラップも女の子特有のふわふわ感や無駄なオラオラ感が削ぎ落とされていて良かった。バトルでも「男か女かわからねえ」というdisをされていて、「ひゃだ!あたしのこと!」なんて思わないでもなかったけれど、まあそんな冗談はさておいて、それだけ男らしい硬いラップができるってことなんだなと思った。そんな勢いでScheme君たちを次々に破っていた。そしたらサイタマノラッパー2に出ている女優さんなのね。そんでもって女帝杯にも出てたし、今度のシンデレラMCバトルにも出るんだってさ。これはすんごいライバルが出てきたもんだ。これからも注目していきたい。

そんな感じで色々なドラマのあったバトルだったけれど、後半の部の優勝者はSHAMA-ZO、君でした。彼はレゲエ畑のMCなんだけれど、ラップと言えばHIPHOP、という概念が強いのにMCバトルでレゲエMCが優勝してしまうってのも個人的には面白かった。音源もリリースしているようなので、今後も期待。

そして今回はなんと特別企画で芸人の「タイムマシーン3号」の関太がSHAMA-ZO、君に挑戦するという展開に。いやあ、たしかに関さんポテンシャルは凄い。ラップ好きなんだろうなあと思わずにはいられないんだけれど、やっぱりキャリアという点では本場のラッパーには敵わなかった模様。それにしても中々のナイスファイトでした。

そして綺麗どころとしてもつ酢飯のワッショイサンバとも対戦

f:id:makisakouonuma:20170520184838p:plain

バイブスだけならヤバいブス」などとパンチラインを繰り出したワッショイサンバに軍配があがった。でもやっぱり芸人さんということでオーラもあって、なかなかの絵になる試合でした。今回は関さんは負けてしまったけれど、地道に練習会やサイファーに挑戦していけばもっともっとうまくなるだろうし、MCバトル芸人という芸風を売りにしたらますます面白くなりそうなのでこれをきっかけに色々トライしてもらいたいなと思う。

ハイレベルなバトル、そしてどんどん躍進するもつ酢飯の勢いのあるライブにタイムマシーン3号関氏のバトル、とっても楽しめました。次回も開催されるということなのでぜひ皆さんお越しください。

 

hontumaさんのルポもぜひ!もつ酢飯のMCなど細かいところまで書かれてます。

hontuma4262.hatenablog.com

あっこゴリラ自主企画イベント『ドンキーコング2.555』 恵比寿が熱気に包まれた夜

ドンキーコング2.555

f:id:makisakouonuma:20170516210901j:plain

あっこゴリラの自主企画イベント「ドンキーコング2.555」が恵比寿baticaで開催された。地道にMCバトルやイベント出演を重ね、1stアルバムを発表した彼女は、今年『CINDERELLA MCBATTLE』で見事優勝に輝き、今やもっとも勢いのあるフィメールラッパーとなった。ラジオやテレビなど様々なメディアにも出演し、知名度も急上昇。新曲ではSTUTSやOMSBとのコラボを通してストリートサウンドを追及しており、中々好調のようである。そんなあっこゴリラが様々なゲストを呼び、恵比寿baticaというアットホームなクラブで魅力的なショーを贈るというイベントが「ドンキーコング2.555」だ。今年の2月から3か月連続で開催されており、1回目はKMCにSTUTS、そして元SEBASTIAN Xの永原真夏、2回目はCINDERELLA MCBATTLEでも活躍したFUZIKO、椿を迎えた。豪華絢爛なゲストを迎えたこのイベントはどちらの回も満員御礼の大成功となった。今回もあっこゴリラのファンが大勢集まった。過去にあっこゴリラの「TOKYO BANANA Ⅱ」でも共演した狐火やあっこゴリラの多くの曲を共作したヒラサワンダなども応援に駆け付けた。

f:id:makisakouonuma:20170517005818j:plain

恵比寿baticaでの開催は今回で最終回となるが、恒例のゲスト出演は意外にも2つのバンドだった。HIPHOPというジャンルに属すあっこゴリラだが、自身の専属バンドJungle bandと出演するので「対バン」という形になる。恵比寿baticaでの記念すべき最終回に「対バン」という形を取ったのはバンド出身のあっこゴリラなりのこだわりなのだろうと感じた。その1つ目のバンドはPAELLASだ。

PAELLAS

PAELLASは去年の年末に1stアルバムを出した大阪出身のバンド。バンドと言ってもそのサウンドはエレクトロニカとR&Bをミックスしたようなジャンルでネオソウルに近い。そして何よりもまずボーカルの甘いマスクが目を引く。実際にフロアを見回すと女性のファンもとても多かった。演奏を見ているとジャジーな鍵盤音と小気味の良いドラム、心地の良い浮遊感を作り出していた。ハイエイタスカイヨーテに近いものがあると感じる。ハイトーンなボーカルもバンド演奏にマッチしていてとても洗練されていた。客も酒を飲みながら思い思いに身体を揺らしていた。決して派手なサウンドではないがPAELLAS、今後も注目すべきバンドの一つだろう。もうとにかくfireが良かった。あとボーカルじゃなくて赤い髪のメンバーがいかつくて個人的にめっちゃかわいかった!!

Fire

Fire

  • PAELLAS
  • オルタナティブ
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

 MISTAKES

そして次の出演はMISTAKES。こちらもブラックミュージックを主軸としたバンドだが、なんとメンバーを新体制で整えて挑んだとのこと。しかし新体制とは思えない小慣れた演奏を披露。PAELLASとはまた違ったファンクネスがあった。しかもいきなりMusiq「Just Friends」のカバーを披露したので度肝を抜かれてしまった。オリジナルよりもスネアが強く、泥臭さが増したアレンジ。そして演奏に負けないボーカルの存在感。力強く鳴り響くドラムにベース、そのスタイルはR&Bというよりもファンクだった。派手さはないがバンドとしての力強さを感じた。この時点でbaticaのフロアも超満員になっていた。

あっこゴリラ

f:id:makisakouonuma:20170517003239j:plain

そして待ちに待ったあっこゴリラのライブが始まる。この日はトレードマークの緑の髪をおだんごにし、大好きなセーラームーンのノースリーブという井出達だった。「JUNGLE STAR WARS」「シン・ゴリラ」「遺書」などライブでお馴染みの曲をあっこゴリラが歌い上げ、Jungle bandがコーラスやダンスでサポート。息もとてもぴったり合っていた。

曲が終わるとあっこゴリラは水曜日のカンパネラ「一休さん」のフックをアカペラでいきなり歌い始めた。そしてそのまま「ハゲ」を歌いだした。両曲とも一休さんを題材にした曲なのである。何事かと思ってしんとしていた客も一瞬でそのことを理解し、みんな大いに盛り上がった。なんとも心憎い演出だ。しかもこの「ハゲ」や「TOKYO BANANA」はJungle bandがそれぞれ楽器を手にし、バンドスタイルであっこゴリラが歌う。CDとは違うアレンジに臨場感が感じられた。

さらにライブでもおなじみになった「ゴリラ夫妻」。アルバムには未収録のこの曲を歌う前には「グッズとして作られたゴリラTシャツが売れないのでそれを売るために、(Jungle bandの)カディオと『ゴリラ夫妻』というユニットを作ってこの曲は産まれました。天気予報にも写り込みにいったりもしました。でも先日遂にゴリラTシャツが売り切れたのです!ゴリラ夫妻は離婚します!」とあっこゴリラがアナウンスするとオーディエンスから笑いが沸き起こり、同時に離婚を惜しむ声も聞こえた。

またSTUTSとコラボし、名曲と評価されることも多い「黄熱病」も披露。この曲を歌う際には「財布から英世を出せ!」とあっこゴリラが客に向かって煽り、みんなそれぞれに千円札を手にして振りかざした。フロアでは曲に合わせて左右に千円札が揺れるというバブルのような不思議な光景が続く。

黄熱病 -YELLOW FEVER- × STUTS

黄熱病 -YELLOW FEVER- × STUTS

  • あっこゴリラ
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

 曲のイントロ部分になるとあっこゴリラが「黒人チャンス」と叫び、Jungle bandのジョジョとカディオがステージの前方でキレキレのダンスを披露して盛り上げた。ちなみに自分も札を振って楽しんだが、よく見てみたら手に持っていたのは英世ではなく、一葉であった。まあ、とても楽しかったので良しとしよう。最後はバンドスタイルで「BACK TO THE JUNGLE」で閉める。演奏が終わっても会場は中々冷めなかった。

f:id:makisakouonuma:20170517003835j:plain

音楽を楽しめのはもちろん、客も一体となって楽しめてしまうのがあっこゴリラのライブの良さだ。あっこゴリラというエンターテインメント。baticaでの開催は今回が最後となってしまうが、6月30日にはあっこゴリラの古巣である渋谷GLADで「びっくり誕生日ドンキー3」が開催される。しかもその日はあっこゴリラの誕生日だという。これまでにもあっこゴリラのイベントに出演したことがあるSTUTSや食品まつりに加えて、Charisma.comのいつかも登場するとのこと。話題の新曲「PETENSHI × いつか(Charisma.com)」が生で聴けるチャンスかもしれない。ぜひあっこゴリラのライブに足を運んでみてほしい。

PETENSHI × ITSUKA (Charisma.com)

PETENSHI × ITSUKA (Charisma.com)

  • あっこゴリラ
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

 

 

TOKYO BANANA

TOKYO BANANA

  • あっこゴリラ
  • J-Pop
  • ¥1800
Back to the Jungle - EP

Back to the Jungle - EP

  • あっこゴリラ
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥1200

 

三上寛がKMCら若手ラッパーとイベント出演!エレキギターを片手に熱演!

立川AAカンパニーで4月21日に『KKK』というHIPHOPイベントが開催された。

出演者はSTUTSのヒットアルバム『Pushin'』への参加も記憶に新しいKMC、鎮座ドープネスも不定期に参加している近所のメンバー、そして70年代からフォーク界の異端児として活躍している三上寛だ。

三上寛。「夢は夜開く」の衝撃的なカバーを『第3回全日本フォークジャンボリー』で披露して一気に名が知れ渡ったフォークシンガーだ。寺山修二の世界を受け継ぎ、怨み・性・死・母親など、三上寛独特の観点から紡がれたその詩はどこか恐ろしく、そしてさみしさがあった。それは世間では「怨歌フォーク」と呼ばれた。 藤圭子でおなじみの「夢は夜開く」。その生みの親でもある曾根幸明が亡くなってしまったというニュースが少し前に入ってきたが、あの名曲も三上に歌わせると「ヌード写真に飛び散った精子を拭く」「ひらく夢などない、まして夜などこない」と行き場のない若者の鬱屈とした想いの歌になってしまう。他にも三人の人間を殺したおどについて歌う「おど」。残酷な歌詞といい、多少のズレがある二重録音といい、何とも言えない不気味さがある「気狂い」。極めつけはランダムに言葉が並んだだけの「ひびけ電気釜」。山本リンダが「どうにもともならない」というキャッチーな歌を歌っていた時代に三上寛は奇怪な歌を歌い、そして人々を魅了し続けた。

今となってはバタイユや村上龍のエログロナンセンスに通じる世界観なのかもしれない。そしてcoccoや椎名林檎のようなメンヘラ音楽の走りでもあると思えるが、当時はさぞかし衝撃的だったろう。かぐや姫の「神田川」、吉田拓郎の「結婚しようよ」など四畳半フォークが流行り、清貧や純愛が歌われていた時代、三上寛や岡林信康は泥臭いフォークを歌い続けた。

その後、80年代には三上寛は曲をリリースを一旦休止。『戦場のメリークリスマス』に代表されるように俳優としての活動が目立つようになるが、90年代には歌手として復活。68才になった現在もインディーズを軸に精力的にリリースを続ける。大小問わずにステージにも立ち、演奏を続けながらゴールデン街で酒を飲む。そこに目を付けたのがKMCと近所のメンバーだった。

ゴールデン街で三上寛と意気投合したKMCが出演を依頼し、今回のイベントは実現したのだ。STUTSやO.N.Oを制作陣に従えて術ノ穴からアルバムをリリースしていたKMC。ゲスト参加したSTUTSの『Pushin'』のヒットによって知名度が急上昇し、今後の動向にも注目が集まる中、このイベントが実現された。また、近所のメンバーもカトマイラ、鎮座DOPENESS、火男などが在籍し、流動的に活動を続ける。物騒なイベント名KKKもそれぞれのアーティスト名の頭文字を取って並べただけという緩いコンセプトのイベントなのである。

会場は立川AAカンパニー。最近HIP HOPイベントで耳にするクラブだ。立川という東京の果ての地ながらも中央線沿線サブカルチャーが集う。ドアをさっそく開けてみると近所のメンバーが演奏していた。カトマイラや鎮座DOPENESSは不参加だが、演奏もダイナミックで上手い上に3MCでボリュームがある。HIPHOPではあるがスカなど様々な音楽が散りばめられており、ホーンやスネアが小刻みに響き渡る。決して広い会場でないし、小規模でなイベントではあるが中々盛り上がっていた。

そしていよいよ、三上寛の登場である。黒いTシャツに質の良さそうなデニムという若々しい姿で颯爽と舞台に立ち、フランクに挨拶をする。手にしていたのはアコースティックギターではなく、エレキギターだった。ドラムもベースもない、エレキギターのみの演奏。何よりも驚くべきはその声の変化だ。人前で45年も歌い続けてきた三上寛の声は70年代の音源に比べて大きく変わっていた。声の張りは失ったが高音はよく伸び、低音部はしゃがれ声ながらもよく響く。何よりもエレキギターの響きがフォークと言うよりもブルースを感じさせる。 往年の名曲「ブルースは俺のものじゃない」をいきなり熱唱。しゃがれたハスキー声といい、エレキギターの切ない響きといい、いや、もはやブルースは三上寛のものだよな、などと思いながら聴く。その姿は圧倒的であった。若々しい恰好をしていたというのもあるが、老人と呼ばれる年齢なのにも関わらず、背筋を伸ばして声を張り上げる。三上は過去の曲だけにこだわらず、比較的新しい「アンコ椿外伝」や「カモメ」を歌った。進化し続ける三上の姿を見てくれということか。それだけでなく青森に伝わる民謡などを歌い上げる。故郷青森に由来する楽曲は過去の呪われた風習や故郷を想う心を歌っており、柳田邦夫の民俗学の世界を感じさせる。しかし「夢は夜ひらく」はやはり良かった。声の高低差で三上の声は表情を変えるが、高音部は綺麗に伸び、そのままフっと抜ける。低音部はしゃがれた声が重く響き、高音部をより引き立てた。音程もしっかりしており、年齢による衰えは一切感じさせない。

夢は夜ひらく

夢は夜ひらく

  • 三上 寛
  • シンガーソングライター
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

 

曲と曲の間では「カズ(KMC)も良いラッパーになった。近所のメンバーも昔よく一緒にやったけど、本当に上手くなった。」などと三十路を過ぎた大人を子ども扱いして笑いを取り、その余裕のある感じにとても好感が持てた。そして迫力のある演奏は終わったあとも余韻を残した。

f:id:makisakouonuma:20170516005539j:plain

最後はKMCのステージだ。ビートを提供してきたSTUTSのヒットにより、再評価されているKMC。ライブでもお馴染みの「KING」「HIP HOPが好き」などを熱唱する。いつどこのライブで常に全力をぶつける。性善説が根底にあると思わせるまっすぐで蒼いリリック、そしてジャジーながらもキャッチーさを持ち合わせるSTUTSのビート。しかもKMCは近々出ると噂される新作から一曲をピックアップして歌ったが、それも良かった。ALTとの共作だという新曲はKMCにとって今までになかった浮遊感のあるトラック。心地の良いジャジー感がありながらも、KMCの熱いラップはそのままだ。KMCの新境地を切り開いたように感じた。新作のリリースが今からとても楽しみである。

f:id:makisakouonuma:20170516005734j:plain

デイイベントながらも十分に楽しめたKKK。三上寛のステージは一見の価値があると本当に思う。今でも精力的にライブを続けているのでまだ生で観たことが無いという人はぜひとも見てもらいたい。

 

ひらく夢などあるじゃなし

ひらく夢などあるじゃなし

  • 三上 寛
  • シンガーソングライター
  • ¥1800

 

KMC!KMC!KMC!

KMC!KMC!KMC!

  • KMC
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥1500

 

ちゃんみな、あっこゴリラ、スダンナユズユリー……若手フィメールラッパーの快進撃

ようやく完成しました!

 

realsound.jp


リアルサウンドでなんとフィメールラッパー特集!めちゃくちゃがんばりました!あっこゴリラやスリチクを取り上げてます。良かったら読んでね!

 

GWはバイト三昧でした。この土日にようやく実家に帰ってきました。たけのこご飯に大根の葉のふりかけかけて食べてインスタントスローライフ。最高。

それでいいっしょはamazon.co.jpを宣伝しリンクすることによってサイトが紹介料を獲得できる手段を提供することを目的に設定されたアフィリエイト宣伝プログラムである、Amazonアソシエイト・プログラムの参加者です。