アレサフランクリンが死んだ。
若い人たちからしたら「誰?」とか「昔のソウルの人」って認識なんだろうなって思う。まあ、わからなくはない。だってアレサのキャリアを振り返ると68年リリースとかなんだもの。あたしだって産まれちゃいない。
でもあたしが若いころまでアレサは現役だった、って言うと最近までリリースは続けていたから語弊があるけど、90年代の末くらいまではシーンの最前線にいた。
A deeper love
あたしがちょうど洋楽を聴き始めたのは中1とかだったんだけど、そのきっかけっていうのが映画『天使にラブソングを』シリーズを見たことだった。特にローリンヒルが出演していた『天使にラブソングを2』が大好きだった。そのサントラにアレサの「A deeper love」が収録されていたんだ。
「A deeper love」を歌ってるのはアレサなんだけど、曲を作ったのは当時「エビバディダンスナウ!」という歌い出しで有名な「Gonna Make You Sweat (Everybody Dance Now)」を大ヒットささせたC+C Music FactoryのClivillés & Coleだった。このClivillés & Coleは91年くらいから活動していてマライアの「Emotions」だとか「Make It Happen」も作っていたヒットメーカーだった。実は『天使にラブソングを』の方にもC+C Music Factory名義で「Just a Touch of Love」を提供してて、「A deeper love」はまさにその続きだった。というか、「A deeper love」も最初はClivillés & Cole名義でリリースされていて、厳密にいうとアレサがリバイバルしてヒットさせた。R&Bというよりもハウス色が強いけど、あたしみたいなアラサー~アラフォー世代のR&Bファンにはわりとなじみが深い。
ため息つかせて
それから映画「ため息つかせて」の存在も大きい。ホイットニー・ヒューストンが出てた95年のブラックムービーなんだけど、サントラは当時は飛ぶ鳥を落とす勢いだったbabyfaceがプロデュース。しかも参加シンガーもホイットニーにトニブラにブランディ、TLC、MJB、フェイスエバンスにチャカカーンという豪華な面々。アレサも「It Hurts Like Hell」というbabyface色の強い曲で参加してたもんだからあたしにとってアレサは昔のソウルシンガーっていうよりも声量のすごい(現役の)中年シンガーってイメージが強かった。
A Rose Is Still a Rose
そして98年にアレサは名盤「A Rose Is Still a Rose」をリリース。このアルバムが本当に良かった。
なんてったって「A Rose Is Still a Rose」はローリンヒルのプロデュース。土臭くてバウンシーなネオソウル。しかも「What I Am」をローリンが引用しててそれもまたかっこいい。当時は気にしてなかったけど、確認してみたらビルボードのR&Bチャートでも5位を記録だしたらしい。
あと当時はビギーやMJBのヒットで頭角を現してきたPUFF DADDY(現DIDDY)がアルバムの2曲目「Never Leave You Again」を同じヒットメーカーのコリールーニーと共同プロデュースしてて良かった。ケリープライスもコーラスと作詞で参加。地味なんだけど、当時PUFFYの右腕だったスティービーJの作風が色濃く出た名曲だと思う。
そして4曲目「Here We Go Again」も当時から人気のあったジャーメインデュプリが制作。マライアのHONEYと同じネタ使いなんだけど、でも品のある曲に仕上がっていてとても好きだった。
他にもTLCをヒットに導いたダラスオースティン、ミディアムスローの鬼・ダリルシモンズ、ニッキーモンローでお馴染みのナラダマイケルウォルデンを制作陣に迎えた名盤だった。あたしは今でも一番好きなアレサの曲は「A Rose Is Still a Rose」だと思ってる。
VH1 Divas
あとあたしにとって大きかったのはなんといってもVH1 Divasというライブだ。VH1っていうのはアメリカの音楽チャンネルなんだけど、チャリティー企画でdivasというライブをやっていて、出演陣がマライア、セリーヌ・ディオン、シャナイア・トゥエイン、 グロリア・エステファン、キャロル・キング、そしてアレサだった。
当時BSでも放送していたのでマライア目的で録画して観たんだけど、すごかった。マライアがアレサと一緒に「Chain Of Fools」を歌っていたり、全員で「(You Make Me Feel Like) A Natural Woman」を歌っていたり。どのシンガーもアレサに負けないくらい声量があってすばらしかった。CDとしてもリリースされているし、ソフト化もされているのでぜひ見てもらいたい。
世紀のライヴ、女神たちの競演~ディーヴァズ・ライヴ [DVD]
- アーティスト: セリーヌ・ディオン,グロリア・エステファン,アレサ・フランクリン,シャナイア・トゥエイン,マライア・キャリー,キャロル・キング
- 出版社/メーカー: Sony Music Direct
- 発売日: 2005/07/20
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アレサは2000年代に入っても良い曲をリリースしていた。
美メロメーカー:ゴードンチェンバースとキャラクターズのトロイテイラーが制作した「The Only Thing Missin」
MJBとのデュエット「Holdin' On」
ジャム&ルイスが制作した「Everybody's Somebody's Fool」
アデルのカバーなんだけど、プロデュースがbabyfaceで、曲中に「Ain't no mountain high enough」を挟んだ「Rolling in the Deep」
アリシアの「No One」もカバー。しかもThe Underdogsがプロデュース。
シネイドオコナーの名曲をアウトキャストのAndré 3000プロデュースでカバー。
キリがないのでザザっと書いてしまった。
「Day Dreaming」「Respect」「Get It Right」とか昔の曲だってそりゃ好きだよ。でもあたしにとってはアレサは「60年代のソウルシンガー」じゃなくて、青春時代にリアルタイムできいていたR&Bシンガーだし、つい最近までリリースもしていた生涯現役の偉大なシンガーだ。
昨日は出張先から帰ってきたので久しぶりに下町で飲んでたんだけど、ちかげちゃんと一緒に「A deeper love」を歌った。あたしたちなりのお弔い合戦だ。大好きだったよ、アレサ。きっとこれからも大好きだよ。