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ゲイHIPHOPライター鼎のブログ

お金のない時に読みたい2冊 「エコノミカル・パレス」 「南瓜とマヨネーズ」

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金がない。
舘ひろしは「免許がない」だし、岩下志麻は「お墓がない」だけど、あたしの場合は「お金がない」だ。と思ったら織田裕二とかぶっちゃった。

 

というわけでじわりじわりと結構精神的に追い詰められてはいるんだけれど、こんな時に読みたくなる小説と漫画がそれぞれある。

 

エコノミカル・パレス / 角田光代

エコノミカル・パレス (講談社文庫)
エコノミカル・パレス (講談社文庫) 角田光代

講談社 2005-10-15
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あらすじ

主人公の女は34歳フリーター。フランス料理風のレストランでバイトをしながらフリーライターとして「雑文」を書いて食いつないでいる、同棲しているヤスオも35歳のフリーターだ。
安酒にお弁当、家賃に壊れたエアコン。生きていると色々なことにお金がかかり、フリーターの身分では全てを収めきれない。年金の滞納通知も届いている。
そんな中、ヤスオがバイトをやめてきた。「失業保険もらえるよ」とヤスオは軽く言うが、でもそれも三か月先の話で当面は主人公の収入に頼らざるを得ない。おまけにヤスオの友達とその彼女が狭いアパートに転がり込んでくるが、お金は一切入れない。
若さも金もない。どんどん追い詰められる主人公の精神状態。サラ金に手を出し、水商売を始める。そしてランパブに堕ちそうになるも34歳の自分の裸体を眺めて失った若さに絶望する。
そんな中、年下の男の子と出会った主人公は片思いをする。でも救いのある結末は決して来ない。

 

「空中庭園」や「対岸の彼女」が有名な角田のみっちゃんだけれども、あたしが一番好きな小説はこれだったりする。結構前の小説だけど、当時はフリーター文学って呼ばれていた。

「リカーショップで発泡酒を買えばいいのはわかっているけど、わざわざリカーショップに行ってケース買いをする気力もない」。金に困る様子がやたらとリアルだ。しかも周りの人間がダメ人間過ぎる。それを許してしまう主人公も同罪だ。そしてサラ金や水商売に手を出していく様子もリアルすぎる。
曖昧な終わり方なので作品としての評価はあんまり高くはない。でもある程度生活に余裕があるときは「え、なんか凄い」と他人事でこの小説を面白がって読んでいた。お金がない今、改めて読むと共感が凄い。今必要なのは「お金が無くても大丈夫♪」みたいな励ましの話じゃなくて「お金がないのは本当につらい」という共感。そしてこのままではいけないという教訓になる。

 

あともう一冊

 

南瓜とマヨネーズ / 魚喃キリコ

南瓜とマヨネーズ (FEEL COMICS)
南瓜とマヨネーズ (FEEL COMICS) 魚喃キリコ

祥伝社 2004-03-29
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あらすじ

バンドマン:セイちゃんと同棲する主人公。しかしセイちゃんはバンドマンで収入はない。ただのショップ店員でしかない主人公の生活を圧迫している。
主人公は水商売(レオタードを着ているのでセクキャバだと思われる)に手をだし、客と個人的に愛人契約を結ぶ。そこでセイちゃんが異変に気付いて二人は距離を置く。罵倒し合うセイちゃんと主人公。「何もないからって人の夢に乗っかってんじゃねーよ」「それを支えてるのは誰よ」二人はもう元の関係に戻れないことを悟る。
そして主人公は昔とても好きだった「ハギオ」との再会する。ハギオの子を宿しておろした過去を持つ主人公にとってハギオはいつまでも憧れの存在だった。しかしハギオは相変わらず最低の男。
主人公に甘えていたセイちゃんも自立し始め、ようやく主人公は本当に大切なのは何なのか気付く。何の変哲もない優しい日々が主人公に訪れ始めるところで物語は幕を下ろす。

 

メンヘラホイホイの魚喃キリコの代表作。
「過去の恋愛」に囚われ、揺れ動き続ける哀しい女のサガが強烈なんだけれど、やはり水商売に堕ちていく描写がリアル。言動が少しキツいけど思いやりが垣間見えるセクキャバの同僚の存在も良い味を出している。そしてかつては女子の憧れだったショップ店員の苦しい現実を描いてるのも時代だよなあと思わされる。ハギオの良い男を装ったダメ男っぷりの描写も秀逸だった。良いのは上辺だけで、基本的にモラハラ男の匂いがプンプンした。
でもこの作品は希望がもてるラストだからまだ救われる。

 

 

どっちも18の時に読んだんだけれど、この二つ作品はどことなく似ているなって思った。自分を犠牲にしようとする女性主人公。他者に犠牲を求める男。
そして苦しい生活の生々しい描写。そこにはシンパシーしかない。「わかる、わかるよ」という共感。「お金がない」なんて不景気な話は現実社会だと笑い話程度にしか披露できない。お金がなくて本当につらい、なんて親にも言えない。だからこそ共感できるものの存在が有り難いと思う。
これを読んだからって現実では何にも変わらない。救いなんてどこにもない。ただ、苦しいのは自分だけじゃないという慰めになる。それだけのこと。でも生活が苦しくて追い詰められてる時にはちょっと癒される。そんな貴重な2冊。

 

角田光代と魚喃キリコ、この二人は対談もしていて、昔読んだことがあるけど、「こんなあたしたちのモロさに気づかない男たちは馬鹿野郎だ」と独身OLのすべてのたまこみたいなことを言っていてめちゃくちゃ面白かった。似通った二人なんだと思う。

酔って言いたい夜もある
酔って言いたい夜もある 角田 光代

太田出版 2005-08-23
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女の生活苦を見事に描いた2つの作品をぜひ読んでもらいたい。ちなみにこれを読んだ当時、草間彌生のクリストファー男娼窟も読んでしまい、精神的に色々と修羅場だった思い出。

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