あたし、宇多田はそんな好きじゃない、というか厳密にいうと「好きじゃなくなった」って表現が正しいんだけど、復帰作を例に漏れず聴いてしまったよ。
いやぁ、良かった。やっぱり道とともだち。あと忘却。Punpeeじゃなくてkohhを持ってくるあたりが宇多田らしいね。個人的には俄然cherry brownあたり持ってきてほしかったけどね。
そんな宇多田だけれども、やっぱり聴いているとアメール・ラリューを思わせる箇所が所々ある。
宇多田ヒカルがアメール・ラリューに影響を受けているというのは本人もラジオ番組「トレビアンボヘミアン」で公言しているし、実際にゲストに招いたこともあった。まあ詳しくはこちら。だから宇多田が好きという人はアメールラリューも抑えといて損はないと思うんだよな。
アメール・ラリュー
アメール・ラリューはニューヨーク出身のシンガーだ。
90年代にブライアン・ウィルソンとGroove Theoryというユニットを組んで「Tell me」という名作を世に送り出した。クラブで耳にしたことある人もいると多いと思う。ガツンと響くベース音にアメールの艶のある声が栄える。
声質やキーこそ違うものの、宇多田がこの浮遊感のある歌い方に影響をされていることはファンだったらすぐにわかるだろう。宇多田はもうちょっとキーが低くてハスキーな声なんだけれど、水面に寄せる波紋のように繊細な歌い方がよく似ている。
アメールラリューはGroove Theoryとしての活動を終え、ソロシンガーとなる。ネオソウル色が強くなるものの、それはそれでとても良い。全ての作品が夫でもあるラルーラリューと共同プロデュースで作られており、知性とエレガントさを兼ね備えた作品ばかり。ゴリッゴリのシンガーにはないスタイルだ。
ソロデビュー作Infinite Possibilitiesからの1stシングルGet upはとてつもないインパクトを残した。ポップさはないが、静かに聴ける素晴らしいアルバムだった。
続く2ndアルバムBraveBirdは自主レーベルからの発売ということで実質のインディ落ちだったが、レーベルからの制約がなく、アメールっぽさが前面に出されていてとても素晴らしかった。
3rdアルバムMorningはインディからの発売にも拘わらず、BillboardのR&Bチャートで8位にまで食い込むという快挙を成し遂げた。
そして4thアルバムLovely Standardsはなんどジャズアルバム。ジャズの名曲をカバーしたこの作品はBillboardのJazzチャートで3位に上昇。声量や声の伸びで勝負するタイプではないが、ノラジョーンズのようにさらっとした歌いこなしていてとても聴きやすかった。
6年の時を経て出された5thアルバムIce Cream Everydayもやっぱり良かった。特に「Afraid」は珍しいアップテンポ。
アメールの美声は多くのアーティストにも愛されており、ゲストシンガーとしても大活躍している。
アメールを聴き込むと宇多田の声にチラホラと見えるアメールの影がまた楽しめる。宇多田が好きと言う人はぜひアメール・ラリューも聴いてみてほしい。