待ちに待った日本語ラップナイト@新宿二丁目アラマスカフェが開催されました。あたしもDJとして参加しているんだけど、今回はなんとラッパーの狐火さんがライブをしてくれるのだ。狐火の魅力についてはこの辺やここら辺で沢山触れているのだけれど、本当に本当に楽しみだった。
工場労働を終えて直接二丁目に向かおうかと思ったけれど、ちょっと体力的に持ちそうになく、一旦家に帰宅して仮眠してから行こうとしたの。そしたら電車のダイヤが乱れててギリギリに着いてしまった。しかも包丁人アディ平が体調不良のため、急遽おたかくんにチェンジ。そんなゴダゴダもあったりしたけれども無事にスタート。
盟友である茨城のオカマのDJが12時から始まったんだけれど、ユッキーやキックといったホモの友人が来てくれた。12時まではオネエスタイルダンジョンの審査員としてもおなじみのLady-Kさんのイベントが開催されていたんだけれど、そのおかけで会場の雰囲気も温まっていた。茨城のオカマは初っ端から「ECDのロンリーガール」「すげ~勢いでやべ~盛り上がる」をぶっこんでて中々好調なスタート。ユッキーがワインなんていう御洒落な飲み物を飲んでいたので「へえ、口に広がる葡萄の芳醇な香り?」って嫌味を言ったらキックが爆笑していた。
そうこうしているうちにゲストであるラッパー・狐火さんとそのバックDJのmiss one cupさんが来られたので、お話をしながら乾杯。2人共二丁目は初めてとのことで緊張している様子だったけれど、ちょうど隣で飲んでいたゲイとノンケという二人組の方々も話しかけてきてくれてたので、狐火さんにも二丁目特有のピースフルな雰囲気を味わってもらえたかなって安心した。しかし、そのゲイの方が唐突にmiss one cupさんに「あんた巨根好きでしょ」と言い始めたので「ひーやめてくれ!!!」とあたしは内心修羅場だったよ。まあ、なんとか流したけどmiss one cupさんは「さっそく二丁目の洗礼を受けた」と笑ってた。
そして狐火さんがglobeが好きだとの情報をキャッチした我々はGlobeの音源も用意していたんだけど、茨城のオカマは「Still glowin' up」をチョイス。脈絡を無視してのぶっこみだったので「唐突なGlobe」と狐火さんはあっけにとられていたのがジワジワきた。
そんなこんなでDJはあたしにバトンタッチ。だてにノンケクラブで遊んでないよ。身内の曲も推しながら流行も取り入れ、そしてglobeも回す。それがあたしのスタイル。繋ぎはへたくそだけれども燃え上がるパッションでカバー。
KMCやあっこゴリラなどお馴染みの曲はもちろん、shing02やBoss the mcなどのコアな音源を流してもフロアでは人がノってくれている。しかもその合間に内田有紀のOnly youをぶっこんだら大盛り上がり、って思ったらmiss one cupさんが発狂していただけでした。ちなみに酔っぱらった勢いでDEEPSのLove is realも回したんだけれど、やっぱりmiss one cupさんが発狂していた。でもやっぱりその辺が盛り上がってしまうのは二丁目特有なんだろうね。気になるGlobeはRimodeに収録されたAnytime smokin' cigaretteのリミックスと、Depaturesの大沢伸一ミックスをチョイス。ari1010の「君の名は」を流していたらフロアから曲名について問い合わせが来たのも嬉しかった。本当名曲です。
そしてついに狐火のライブ。
「東京に24の時に行ってから、3年経って27歳を迎えた時に『僕音楽で食べてくのはもう無理だ』って思って、もう正社員で就職して趣味で音楽やろうと思った時期がありまして。その時期に正社員の面接を30社位受けたんですけど、全然受からなかったんです。全部もう不採用だったんです。そのあてつけに書いた曲です。27才のリアル。」
もうすがるように何度も聴いたはずなのに「あたしのことじゃん」と重ね合わせたら涙があふれてきた。1年以上定職にありつけなくて、精神的に不安定になりながらも「下を向くのはやめよう」と何度も言い聞かせてここまでやってきた。でもこの曲は「泣いてもいいんだよ」と言ってくれる気がするのだ。
勇気が欲しい
特に上司が活発で生意気な年下でも余裕で頭を下げられる勇気が欲しい
月給25万以上社会保険出来ればジムの割引券も欲しい
採用面接前から働いている自分を想像してネガティブにならない勇気が欲しい
けど、本当は1つの事を信じて続ける勇気を一番欲しい
今、目の前であんなに憧れた狐火がラップしている。ラップが下手だと彼は自虐的にいうけれども、安定してスキルが際立ったラップよりも、張り詰めた糸のように緊張感のある彼のラップは一言一言ががつんと心に響く。普段耐えながら明るく振舞っていた分、リミッターが外れて感情が溢れ出す。「なんで自分だけ仕事が見つからないんだろう」と号泣しながら必死に耳を傾けて聴いた。
地団駄を踏んだり、アグレッシブに動きながらライブをする狐火。途中でアラマスカフェの看板を倒してしまうというアクシデントに見舞われたが、ポエトリーリーディングの強みで曲の中で「色々謝るんで。僕をここで働かせてください」と言い、そして「ウソっぽい 空が晴れて手を合わせて逃げ道ばっかり探してた。ウソっぽい 志望理由を考えるのにうんざりプライドが邪魔になった」と元々のリリックにつないでいて、全てが元からの演出であるかのようだった。奇跡、なんていうと大げさだけど、新宿二丁目×狐火という組み合わせがもたらしたミラクルだ。
昨夜の自分の中のハイライト。
— 平山 佳男 (@papachin4403) 2017年4月1日
アクシデントすらもリリックにリンクさせてしまう狐火。
新宿二町目にポエトリーラップの神が舞い降りた瞬間。 pic.twitter.com/R4BzkDaoUx
そして31才のリアルもやってくれた。実はこの曲には思い入れがあって、その前にも回したばかりだった。あたしだけではなく、狐火ファンも目頭を押さえていた。狐火ファンは皆それぞれに何かを抱えている人が多い。「俺こんなはずじゃなかった。絶対こんなはずじゃなかったんだよ。」と狐火はみんなの心の叫びを代弁してくれる。
そしてマイハツルア。「あの、僕のお婆ちゃんがアルツハイマー病になってしまいまして。そのうちに僕のことも忘れるようになってしまって、本当にそれが悲しくて。でもすべてを忘れてしまったおばあちゃんの無邪気な笑顔を見ているとこれはこれでよかったのかなって思えて」と泣き声で狐火は話す。
秒針一秒一秒越しにじょじょに愛おしい思い出が消えていくならその空いた穴は何で埋まるでしょうか?
あなたの記憶からオレがいなくなる前に後何回オレの名前を呼んでくれるかな
後何回ありがとうを言えるかな 教えてください
切ない歌詞に涙が止まらない。あまりに泣きすぎていたのでLADY-Kさんがテキーラをくれた。開催サイドの人間なのにね。お客さんが明らかに引いているのがわかる。でも今日泣かないでいつ泣くのだろう。くだらないことで涙を流すくらいならその分今この瞬間に沢山泣いておきたい。そう思えるくらい素敵なライブだった。小さなバーの店内でオーディエンスとの距離もかなり近くて、狐火の歌が、ラップが皆の心に響く。ゲイもノンケも関係なく。ああ、本当に狐火さんに来てもらって良かったなと心の底から思った。そしてこんなに泣いたものだからやたらとすっきりしてしまった。狐火セラピー。
ライブ後はNAKAMATA、そしてオタカ君のDJを聴きながら飲めや踊れやのどんちゃん騒ぎでした。神門やStuts dt Kmcが流れる。ゲイ界隈の友人はもちろん、MC rynちゃんに山田ちゃんなども遊びにきてくれた。狐火目当てで初めて二丁目に来たというノンケの子達ともワイワイ話していたんだけれど「二丁目最高」って笑ってくれた。
中でも狐火のとりまき、というか「旅と音楽」の人たちが本当にぶっ飛んでいた。狐火やdaokoのトラックを作っている観音クリエイションさんは前から憧れてよくブログも読んでいたんだけれど、ご挨拶の際に「素敵なマドラーをお持ちで」と言ったらメガネをお酒に突っ込んでつるでかきまぜてくれた。LIGの社長でもあるゴウさんには「あたし、LIGのライター受けたんですけど落ちたんですよね」と吹っ掛ける形になってしまったのに、ゲイに対してやたらと友好的だったもんで、よく話をしてみたら本当にゲイカルチャーが好きで行きつけの上野のゲイバーが同じだってことも判明した。野田クラクションベベーは茨城のオカマとすっかり意気投合。揃いも揃っていい歳こいて、バカみたいにテキーラを煽って飲んで、お酒に眼鏡を漬け込んで飲んで。なんて世の中って楽しいんでしょう。
初めて2丁目来てくれた人たちが「楽しかったよ」ってみんな言ってくれて、素晴らしいアーティストが素晴らしいライブをしてくれて、ただそれだけのことかもしれないけど、本当に嬉しくて泣けてくる。小さな空間だったかもしれないけど、とても素敵な夜だったなぁ。普段、自分が同性愛者であることが当たり前になっているし、「二丁目の住人」と言えるほど二丁目にも来ないけれど、こういう場をみんなに提供できて、ゲイに産まれてきて良かったなあと久しぶりに実感できた。
狐火さん、DJのみんな、アラマスカフェスタッフ、そして遊びに来てくれた皆さん、本当にありがとうございました。今回のライブは別の形でルポ記事もやるんで出来上がり次第公開したいと思います。楽しみにしていてね。
ちなみに今回のセトリはこんな感じでした。
1 Rock The Bells feat.KMC / STUTS
2 黄熱病 -YELLOW FEVER- × STUTS / あっこゴリラ
3 マイアミネガティブ feat.あっこゴリラ / 狐火
4 Heisei (Dale Nixon Remix) / Hazy from Rap Brains
5 地下資源 / あべともなり
6 PETENSHI × ITSUKA (Charisma.com) / あっこゴリラ
7 Anytime smokin' cigarette / Globe
9 LA NINA feat.RUMI,MARIA / KLEPTOMANIAC
10 オーライオーライ / 呂布カルマ
11 400 / Shing02
12 Wake Up(Blues In The Dark2) / COPPU
13 NIHILISM feat.不可思議/wonderboy / Z.I.O-RAMA
14 Only you / 内田有紀
15 31才のリアル / 狐火
16 このままで (feat.サトウユウヤ) / Jinmenusagi
17 Love is real / Deeps
18 It ain't nothing like Hip hop / Norikiyo
19 live feat,MEISO / 田中光
20 一陽来復 feat. Chouji & 唾奇 / Chico Carlito
21 East Tokyo State Of Mind / Quronn-Lab.
22 TwentyFive / KANDYTOWN
23 Don't Like Me / VOLO
24 Hard Drive / ROCKASEN
25 丑三ツ bugseed remix / Meiso
26 ホワイト・リザレクション / もつ酢飯
27 Pellicule / 不可思議/wonderboy
28 君の名は / ARI1010
29 DEPARTURES (Shinichi Osawa Remix) / globe
酔っぱらってたから多少の違いはあるかもしれないけど、こんな感じでした。
日本語ラップナイト、また次回もやるときはお知らせします。その際はぜひいらしてね。