都心で暮らしてると入谷に行くことなんてないかもしれない。東京の性処理を円山町とともに担っている鶯谷、そこから入谷は歩いて近い。特に何があるわけでもないが、自社だけは揃っている。恐れ入谷の鬼子母神、そんなダジャレも最近はめったに耳にすることもないが、入谷にはその鬼子母神がある。まゆだまおみくじで話題になった小野照崎神社もあるし、酉の市でおなじみの鷲神社にも近い。
鬼子母神では毎年7月6日、7日、8日に朝顔市が開催される。公道を通行止めにし、商店街の歩道が朝顔の売り場に代わる。立派な花を咲かせている朝顔、もしくは開花前でつぼみをたくさんこさえた朝顔の鉢植えが夏の訪れを知らせる。たくさんの的屋が集まり、人も皆集まる。
あたしは植物を買わないことにしている。ルコウ朝顔を育てていたのに二日帰省しただけで枯れてしまったのがショックだったからだ。そんなに繊細な生き物を育てる自信がない。でも見るだけなら楽しいのでついつ朝顔市に寄ってしまう。今年で三年目。去年は大雨で人通りも少なく、朝顔業者も諦めモードが漂っていて悲惨だった。今年はどうなんだろうと日比谷線で入谷で降りた。
去年のことが嘘だったかのように朝顔市は大盛況だった。
朝顔を見繕いにきたひとや、朝顔とは無縁だけどお祭りを楽しみにきている若者たち。朝顔に群がり、的屋に並んでいる。
無数に並ぶ朝顔は圧巻だった。青々と繁った葉に生命力を感じた。少し汗ばむくらいの湿度と温度。ここは台東区の下町コンクリートジャングルだ。
朝顔は今年は団十郎という品種が主流のようでどの店でも団十郎ばかり売っていた。赤紫の上品な色をした花を咲かせる。しかし行ったのが夜だったので団十郎は咲かずに、夕顔が白い花をしおらしく咲かせていた。鉢の値段は平均2000円。店によってはひと鉢1000円でも売っているし、逆に他の鉢よりも高いものもある。
ゆっくり眺めていると浴衣を着た女子のグループが楽しそうに歩いていた。浴衣に朝顔、ああ夏が来たんだなと改めて思った。
母子鬼神をお参りするのも並ばなくてはならない。その名の通り、子供の健康と安産を願うお寺だ。あたしは子を産む器官がないので困ったが、友達の子供の健康と少しだけ就活の成就を祈った。
朝顔をひとしきり見たあとはB級グルメ巡り。あの的屋にしかない魅力はなんなんだろう。とても荒削りなのに病みつきになる美味しさ。あれもこれもと見ていたら結構食べてしまった。花より団子。
肉巻きもちもち棒
潰したもち米を豚バラに巻いて焼き、塩だれをかけてた逸品。少しワイルドなきりたんぽ
鮎の塩焼き
シャーピン
中華のお焼き
とっても満足でした。
朝顔を買おうか一瞬迷ったけど、余裕がないのでやめた。仕事が決まり、今よりも広いベランダがある部屋に移り住んだら育てることにしよう。
仕事の疲れと暑さで帰宅後すぐに寝てしまった。もうすぐ夏があたしたちを追ってくる。
朝顔の写真は去年一昨年の方がよく摂れたのでそっちもアップする。